組織の一体感や文化醸成が希薄といわれる昨今、社員の「自分ごと化」というキーワードを当たり前に耳にする時代になりました。
この記事では、社員の主体性、納得感、共感といった「自分ごと化」に関わる課題を、周年を契機に解決する方法について紹介します。
「テレワークや副業の普及」や「雇用観の変化」によって、社員の帰属意識は目に見えて薄くなっています。
顔を合わせずとも業務は回る一方、所属する会社やチームで、どんな未来に向けて働いているのか?仕事の目的意識やつながりが以前よりも見えにくくなっています。また、かつてのような「終身雇用」前提の時代は終わり、社員の意識は「どの組織に属するか?」より「何を自己実現できるか?」へシフトしています。
こうした状況もあり、経営による「意味づけ」や「つながり」を意識した社員参加型の施策を通したコミュニケーションの場作りも、組織運営の大切なテーマになっています。
社員が会社という組織を「自分ごと」のように感じるためには、単に社員の意見を募り、組織運営にその意見を反映するのではなく、社員の価値観やキャリア観を深く理解し、それらを組織の成長や未来作りと重ね合わせてコミュニケーションの施策を設計する必要があります。
こうしたコミュニケーション施策実施の機会として、会社全体を巻き込んだ施策が実施しやすく、社内の注目も集まる数少ない機会が「周年」です。
周年は、過去を振り返る節目であるのと同時に、今後の組織のあり方を見つめ直す絶好の機会です。ただ記念イベントを実施するだけでは、社員の心には残りません。
「周年を通じて、社員や組織がどう変わるか」という目標を見据えた設計が必要です。以下、社員一人ひとりに関与と共感を働きかける施策実施のための4ステップを紹介します。
まず必要なのは、社内の現状に対する理解です。「社員のモチベーション」や「理念への理解度」、「仕事への誇り」、「組織に対して持っている期待」などを知る必要があります。
1on1やアンケートを活用して、定性的・定量的に現状を知り、組織として「どんな社員にどうなって欲しいのか」を明確にします。
施策への社員が関わる余地が必要です。アイデア募集、部署代表のプロジェクトチーム編成、ワークショップ形式など、「社員が意見や想いをアウトプットできる仕掛け」を初期段階から用意しておきます。少しでも多くの社員が関与できるように、その方法は職種や組織文化や課題感に応じて設計します。
共感を生む施策は、“社員が自分の関わったものとして語れる”ものであるべきです。たとえば、ひとりひとりの社員の声を織り込んだ周年史やブランドブック、アクションプラン、自分たちの姿が映っている周年ムービーや記念ツール、会社の未来像を描くワークショップなど、社員にとって関わりという体験が生まれるように設計をします。
周年施策によるコミュニケーションが一過性で終わらないように、社内からのアンケート、フィードバック、振り返りなどを実施して、変化の兆しを把握や周年後のコミュニケーション施策設計にもしっかりと活かしましょう。周年の施策だけでなく、その後の組織運営においても積極的に社員が関わりを持ちやすい環境を作りましょう。
周年は、組織の過去を振り返る場であると同時に、社員とともに未来を語り始める貴重な機会でもあります。一人ひとりの価値観やキャリア観と組織の未来像を重ね、「これは自分たちの物語だ」と感じられる施策は、単なる記念行事を超えた強いつながりを生みます。
その実現のためには、施策の「中身」だけでなく「プロセス」も重要です。社員の声をどう受け止め、どんな意図で設計された施策なのか、その透明性と納得感もまた、共感を生む土壌になりますので、施策のプロセスそのものを伝えていくことも、インナーブランディングの一環です。
☐ 意見の収集・反映に関するプロセスや意図を社内に説明できる状態にあるか
☐ 「どんな社員にどうなって欲しいか」という態度変容の目的を言語化できているか
☐ 施策初期から社員の関与機会(意見収集・参加の仕掛け)を設計しているか
☐ 社員が「自分の関わったものだ」と語れるようなアウトプットを用意できているか
☐ 周年後の変化(意識・関係性・組織感)を把握する振り返りの手段を準備しているか